大判例

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大阪高等裁判所 平成12年(ネ)1681号 判決

主文

一  控訴人らの被控訴人らに対する本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは、連帯して、控訴人甲野太郎に対し、五四六六万二八一九円、控訴人甲山大助に対し、三五七四万六七六三円及びこれらに対する平成七年七月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  被控訴人ら

主文同旨

第二  事案の概要

一  原判決二二頁末行の「するが相当」を「するのが相当」と訂正し、次項以下のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」(原判決四頁八行目<編注 本号二五二頁四段一九行目>から五一頁六行目<同二五三頁三段二八行目>まで)のとおりであるから、これを引用する。

二  控訴人らの主張<省略>

三  被控訴人らの主張<省略>

第三  判断

一  当裁判所も、控訴人らの被控訴人らに対する本訴損害賠償請求は、失当であるから棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり改めるほか、原判決の「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」(原判決五一頁八行目<編注 本号二五三頁三段三〇行目>から八四頁一〇行目<同二五八頁二段二八行目>まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決五二頁一〇行目<同二五三頁四段一九行目>の「ハンドル」から末行<同二五三頁四段二一行目>の「ボックス内の」までを「ハンドルのグリップを両手で持って、左ハンドルグリップの右側(ハンドル中央寄り)に設置されたボックス内に並列している二個のボタンのうち」と改める。

2  原判決六三頁末行<同二五五頁二段三一行目>の「横着にも」と、六四頁七行目<同二五五頁三段九行目>の「予想に反して」をそれぞれ削除する。

3  原判決七三頁五行目<同二五六頁四段五行目>から七四頁三行目<同二五六頁四段二二行目>までを次のとおり改める。

「 以上で認定説示したところに基づき、本件事故の原因について検討する。

本件改造レバーは、運転者がそれを握ったときにハンドルパイプを包み込むような形態となる型のものであるところ、本件改造レバーは、レバーケースがなく、ハンドルパイプの湾曲部分をまたぐ形で取り付けられており、加えて、その取り付け角度がハンドルパイプの湾曲方向よりやや下方に向けて取り付けられており、そのため、本件改造レバーとハンドルパイプとが平行になっておらず、本件改造レバーの片側裏面がハンドルパイプと接触するほど間隙の狭い、偏った位置に取り付けられている結果、丙野が本件ハンドルを握った際、本件改造レバーの裏面とハンドルパイプの間に砂粒等が嵌入したための摩擦力で、丙野が本件ジェットスキーから振り払われた後も、本件改造レバーがハンドルパイプに食い込んだまま元に戻らず、スロットルが開いた状態になってしまい、そのままエンジン全開の状態が維持されたと認めるのが相当である。右の事実に、運転者の丙野が浜辺の浅瀬で本件ジェットスキーにまたがることなく、機体の脇から両ハンドルを持ってエンジンを始動させた結果、通常の走行においては、スロットルレバーが戻らなくなった時にとったはずの、エンジンストップボタンを押す操作をすることができなかったことを併せ考えるならば、本件事故は、本件改造レバーの装着位置が偏っていたこと及び通常とられることのない丙野の運転操作が競合して本件暴走が生じた結果惹起されたものというのが相当である。」

4  原判決七五頁末行<同二五七頁一段二二行目>の「グリップの」の次に「右」を加え、七六頁一行目<同二五七頁一段二三行目>の「ボタンと共に設置され」を「ボタンのさらに右側(ハンドル中央寄り)に設置されているために、ハンドルを握った際不用意に触れてしまう位置にはなく」と改める。

5  原判決七六頁九行目<同二五七頁二段二行目>から七七頁三行目<同二五七頁二段一一行目>を次のとおり改める。

「 控訴人らは、本件ジェットスキーにテザーコードキルスイッチを装備していれば、本件事故が防止できたところ、これが装備されていないことが本件事故の原因であり、右装備がないのは被控訴人川崎重工の設計上の瑕疵に当たると主張するので検討する。

右の装置の本来の目的は、運転者が、船体にまたがって水上を走行するときに、キーを所定の位置に差込み、コード末端を手首に巻き付けて運転すると、走行中にジェットスキーから転落した場合に、キーが外れてエンジンが停止することにより、運転者が置き去りにされるのを防止することにある。ところで、本件事故の直前、丙野は、浅瀬で波にさらわれようとしていた船体を流出から防ぐために、急遽船体の脇からハンドルを持ってエンジンをスタートさせるという、通常とは異なる運転態様をとったのであるから、右の装備があったとしても、その使用方法に従ってコードを手首に巻き付ける所作をとらなかった蓋然性が高かったというべきである。そして、同人が通常の運転方法に従って本件ジェットスキーにまたがって走行していたならば、右の装置がなくても、スロットルレバーが戻らなくなった場合には直ちにエンジン停止ボタンを押すことによって同様の結果を得ることができたことはいうまでもない。このように本件事故は、スロットルレバーの改造と運転者丙野の通常とは異なる運転とが競合して生じたものというべきであるから、被控訴人川崎重工がテザーコードキルスイッチを装備する設計をしなかったからといって、本件ジェットスキーに設計上の欠陥があるということはできない。」

6  原判決七八頁一行目<同二五七頁二段二六行目>から四行目<同二五七頁二段三三行目>までを次のとおり改める。

「3 以上で認定説示したところによれば、本件暴走の原因は、本件改造レバーを偏った位置に設置したこと及び運転者丙野の通常の使用方法とは異なる本件ジェットスキーの運転にあったというべきであり、その他本件全証拠によるも、本件ジェットスキーに、ワイヤー、スロットル、エンジン等の構造的・機能的欠陥が存在したことを認めるに足りない。」

7  原判決八二頁九行目<同二五八頁一段一九行目>の「形状のため」から一〇行目<同二五八頁一段二二行目>の「断ぜざるを得ない」までを「形状のため、その取り付け方と使用形態如何によっては、砂粒等が嵌入して噛み合った場合に元に戻らなくなってしまうという事態が起こる可能性を有する製品ということができる」と改める。

8  原判決八三頁三行目<同二五八頁一段二八行目>から八四頁一〇行目<同二五八頁二段二八行目>までを次のとおり改める。

「3 そこでまず、以上で認定説示したところに基づき、被控訴人らが、本件改造レバーの装着及び丙野の運転形態に起因する本件事故を予見できたか否かについて検討する。

前記で認定したところと、証拠(甲第三八号証、第四〇号証)に弁論の全趣旨を総合すると、本件ジェットスキーと同型の製品に取り付けられているサムシフト型(親指で押すタイプ)のスロットルレバーは一般ユーザーに不人気で、平成初年ころから、本件改造レバーと同様のアヒル(又は烏)の嘴型スロットルレバーが本件ジェットスキーと同型の製品に相当数純正品の代わりに取り付けられていること及び公刊本においてスロットルレバーの改造に関する記事が登載されていること、設計者としてのメーカー及びディーラーとして広く自社製品に関する人気等の情報を収集しているであろうことなどの事実によれば、被控訴人らは、本件改造レバーが本件ジェットスキーと同型の製品に装着されていたことを認識していたものと推認される。しかしながら、本件事故以前にスロットルレバーの改造に起因する事故が発生したことについては立証がないこと、本件事故後に被控訴人らが本件ジェットスキーと同型製品により実験を繰り返したにもかかわらず、暴走が再現できず、原審裁判所によって取り寄せられた本件事故の捜査記録に基づき、本件ジェットスキーの改造レバーの取付位置に取り付けた上、濡れた砂を噛み合わせた実験を行い、初めて、スロットルレバーが全開の位置から戻らないまま暴走するのが再現できたことなどが認められ、これらの事実にかんがみるならば、被控訴人らが本件事故発生前において、市販されている複数の社外製品のスロットルレバーを取り寄せ、本件改造レバーと同様の偏よった位置・方法で取り付け、同種の実験を行って初めて他社製品の改造レバーの偏った取り付けに起因するエンジンの全開を知り得たと考えられるところ、本件事故前に被控訴人らがこのような手順で実験を行うことに想い至ることは著しく困難であったと考えられる。加えて、丙野の本件ジェットスキーの運転態様を見ると、そもそもジェットスキーは、操縦者が水面を滑走するレジャー艇であるのに、丙野が行ったような海辺の波打ち際で操縦者が操縦の意図なしに、船体にまたがることなく、その脇からハンドルを握ってエンジンを始動させ、スロットルレバーを強く握るという使用方法は、ジェットスキーの通常の使用方法でなく、いわば自動二輪車を車両脇に立ってハンドルを握ったままエンジンを始動させてアクセルを全開するのと同様の極めて危険なものであって、正常なジェットスキーの運転方法とは到底いえないこと等の事実にもかんがみるならば、被控訴人らに、本件事故の原因となった、本件改造レバーの装着及び運転態様についての予見可能性があったとは認めがたいといわざるを得ない。

もっとも、証拠(甲第四〇号証)によれば、本件事故前にアメリカにおいて、水上オートバイのフリースタイルの競技中に無人のオートバイが観客席に突っ込み、また水上オートバイレース中にオートバイが観客席に突っ込んだ例が各一例ずつあったことが認められるけれども、これらがいずれも競技中という、通常の使用方法とは著しく異なる状況下に生じたものであり、しかも、事故原因についてはこれを認めるに足りる証拠がないのであるから、これらの報告例があるからといって、右の結論を左右しない。」

二  以上によれば、控訴人らの被控訴人らに対する本件損害賠償請求は失当であるから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当である。

よって、控訴人らの本件控訴をいずれも棄却し、控訴費用の負担について民訴法六七条一項、六一条、六五条一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 根本眞 裁判官 鎌田義勝 裁判官 松田享)

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